
この記事のポイント
- EU委員長が欧州議会で演説し、極端な国家主義勢力とロシアがEUの結束を崩そうとしていると警告した。
- カナダを初の「準加盟国」とする構想と、13歳未満のSNS利用禁止方針が演説の目玉として報じられた。
- イタリア与党FdIはカナダ首相への姿勢を「平身低頭」と批判し、EUと加盟国の距離感が改めて論点になった。
欧州議会での演説がイタリアで論争に
欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が欧州議会で行った演説が、イタリアの主要紙で大きく取り上げられ、与党側からの批判も含めて論争になっています。欧州委員会はEUの「内閣」にあたる執行機関で、委員長はその長。毎年秋口に欧州議会で行うこの種の演説は、EUの年間方針を示す場として各国メディアが注目します。
イタリアの『コリエレ・デラ・セラ』紙や経済紙『イル・ソーレ24オーレ』などが伝えた内容によれば、演説の柱は大きく三つでした。第一に、EUの結束を揺るがす勢力への警戒。第二に、カナダをEUの「準加盟国(associated member)」と位置づける構想。第三に、13歳未満の子どもによるSNS利用を禁じるという提案です。
「ウルトラナショナリストとロシアが分断を狙う」
報道されている発言の核心は、極端な国家主義勢力とロシアがEUを「砕こう(frantumare)」としている、という趣旨の警告です。ウクライナ侵攻の長期化を背景に、EU域内で偽情報や政治的影響力工作への懸念が高まっており、その文脈での発言とみられます。ただし、具体的にどの政党や人物を念頭に置いたのかを委員長が名指ししたかどうかは、現時点の報道からは断定できません。
この「ウルトラナショナリスト」という表現が、イタリア国内では敏感に受け止められました。メローニ首相が率いる与党「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia/FdI)」は、右派・保守色の強い政党としてEUレベルでもたびたび議論の的になってきたためです。
カナダ「準加盟」構想と13歳未満のSNS禁止
カナダを最初の「準加盟国」とする構想は、加盟国そのものではないものの、防衛や通商などの分野でEUと制度的に深く結びつける枠組みを指すと報じられています。米国の通商政策が揺れるなか、EUが志を同じくする国との連携を制度化しようとする動きと読むことができますが、具体的な制度設計や法的根拠については、今後の交渉次第という段階です。
もう一つの目玉が、13歳未満の子どものSNS利用を禁止するという方針です。オーストラリアが16歳未満の利用を禁じる法律を成立させたことをきっかけに、欧州でも未成年者保護をめぐる議論が加速していました。EU全体で年齢制限を設ける場合、実効性のある年齢確認の方法や、各国法・プライバシー保護との整合が課題になると一般的に指摘されています。
与党FdIの反発「カーニー氏への平身低頭は気まずい」
イタリア国内で最も political な火種となったのが、FdI側からの批判です。報道によれば、同党はカナダのマーク・カーニー首相に対するフォンデアライエン氏の姿勢を「お辞儀(inchino)」になぞらえ、「気まずい」と評しました。カーニー氏は中央銀行総裁を務めた経歴を持つ人物で、EUとの接近を進める立場にあります。
この批判は、単なる外交儀礼への当てこすりというより、EUの意思決定が加盟国の頭越しに進むことへの不満の表明と読むのが自然でしょう。メローニ政権は対EUで協調路線を取りつつ、国内向けには主権を重んじる姿勢を見せる必要があり、その二面性が今回の反応にも表れています。イタリア政治を読むうえで、EUとローマの距離感は引き続き重要な論点です。
※本記事はイタリアの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Corriere della Sera




