
この記事のポイント
- マドリードで87歳女性の強制退去に抗議する大規模デモが起き、参加者はソル広場に野営を設置した。
- 「賃貸で稼ぐ仕組みか政権か」というスローガンが掲げられ、サンチェス政権への圧力が強まっている。
- スペインの賃貸市場は個人家主が中心で、政府の住宅政策が十分に機能していないとの批判が根強い。
87歳女性の立ち退きが火をつけた大規模デモ
スペインの首都マドリードで、87歳の女性マリカルメンさんが住まいから強制退去(デサウシオ)させられることに抗議する大規模なデモが行われ、現地メディアが大きく報じています。フランス24によると、抗議は一人の高齢女性の事案にとどまらず、スペインで長年くすぶってきた住宅危機への怒りが一気に噴き出した形になっています。
デモ参加者の一部は、マドリード中心部の広場プエルタ・デル・ソルに野営(キャンプ)を設置しました。左派系メディアのエル・サルトは、参加者が「政府への圧力を段階的に強める」ためにソル広場に居座る構えだと伝えています。
「賃貸で稼ぐ仕組みか、政権か」
スペインの主要紙エル・ムンドは、今回の動きをサンチェス首相(社会労働党)にとっての「15M(キンセ・エメ)」になりかねないと表現しました。15Mとは、2011年5月15日にソル広場の占拠から始まった若者中心の抗議運動「怒れる者たち」を指し、既存政党への不信を象徴する出来事としてスペインでは広く記憶されています。今回の参加者が掲げる「O cae el rentismo, o cae el Gobierno(家賃で稼ぐ仕組みが倒れるか、政府が倒れるか)」というスローガンは、住宅を投資対象とする「レンティスモ(不労所得型の賃貸ビジネス)」への強い反発を示しています。
個人家主が支配する市場と住宅令
有力紙エル・パイスは、この立ち退き事案と政府の住宅に関する政令(デクレート)を結びつけて論じています。スペインの賃貸市場は、日本と同様に大手企業よりも個人の家主が物件の多くを保有しているとされ、規制が届きにくい構造が指摘されています。政府が家賃抑制や立ち退き防止のための措置を打ち出しても、実際の運用は個々の家主と借り手の関係に左右されるため、効果を疑問視する声が絶えません。
背景として、スペインでは近年、観光客向け短期賃貸の急増や住宅供給の不足、賃金の伸び悩みが重なり、主要都市の家賃が急騰しています。特にマドリードやバルセロナでは、収入の大半を家賃に充てざるを得ない世帯が増え、住宅問題は失業に代わる最大の社会的関心事となっています。
今後の焦点
マリカルメンさん個人の事案の詳細や、退去の最終的な結果については現時点で断定できる情報が限られています。ただ、高齢者の立ち退きという象徴的な出来事を契機に、住宅政策への不満が政権批判へと直結しつつあることは確かです。ソル広場の野営がどこまで拡大するのか、そして政府が追加の対策を示すのかが、当面の注目点となりそうです。
※本記事はスペインの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:France 24




