
この記事のポイント
- バーナム氏が、年金を毎年引き上げる現行のトリプルロックを2030年に終わらせ、新しい形に切り替えると表明した。
- トリプルロックは、物価・賃金の伸び・2.5%のうち一番高い率で公的年金を上げる制度で、国の支出が膨らむ一因とされる。
- 浮いた財源は介護に回す方針。一方で、年金を受け取る人の暮らしへの影響をめぐって議論が起きている。
年金の「トリプルロック」を2030年に見直し
英国の労働党の有力政治家アンディ・バーナム氏が、国の公的年金(ステート・ペンション)の引き上げ方を決める「トリプルロック」を、今の形のままでは2030年に終わらせると表明しました。浮いたお金を、高齢者や障害のある人を支える「社会的介護(ソーシャルケア)」に回すとしています。BBCや英紙ガーディアン、フィナンシャル・タイムズなどが大きく報じています。
トリプルロックとは
トリプルロックは、2010年代初めに当時の保守党・自由民主党の連立政権が始めた仕組みです。公的年金を毎年、「物価の上昇率」「平均賃金の伸び率」「2.5%」のうち一番高い率で引き上げます。年金の価値が物価や現役世代の賃金に置いていかれないようにするのが狙いで、高齢者から強く支持されてきました。
一方で、年金の額がどんどん上がるため、国の年金支出が膨らむ一因だと指摘されてきました。政治の世界では「手をつけにくい制度」として知られ、主要政党はどこも長く維持を約束してきた経緯があります。
「新しいトリプルロック」と介護財源
報道によると、今回の案は制度を完全になくすのではなく、2030年以降は形を変えた「新しいトリプルロック」に切り替えるものとみられます。英国の有力シンクタンク、財政研究所(IFS)も新制度の仕組みと影響の分析を出していますが、具体的な計算方法などの細かい点は、現時点で編集部が確認できた範囲でははっきりしていません。
見直しのもう一つの軸が、介護の財源です。英国では、介護サービスの費用を自分で払わなければならない人が多く、その費用をまかなうために自宅を売るケースがたびたび社会問題になってきました。フィナンシャル・タイムズは、増税をせずに介護の仕組みを大きく変えれば、家を売らざるを得ない人が出るとバーナム氏が警告したと報じています。年金の伸びを抑えて介護に回すのは、増税をせずに財源をつくる方法の一つと位置づけられているようです。
論点:高齢者は貧しくなるのか
一番の論点は、年金を受け取る人の暮らしへの影響です。ガーディアンは「年金受給者は貧しくなるのか」という問いを立てて検証しています。一般論として、引き上げの基準がゆるやかになれば、長い目で見ると年金額の伸びは今の制度より小さくなる可能性があります。ただ、実際の影響は新制度の中身や、その後の物価・賃金の動き次第です。
日本でも、年金の伸びを抑える「マクロ経済スライド」や介護保険の財源は、たびたび議論になるテーマです。高齢化が進む中で、年金と介護にどう財源を配るか。英国での議論は、日本にとっても人ごとではないと言えそうです。
※本記事は英国の現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:BBC




