
この記事のポイント
- メローニ首相が欧州委員長に書簡を送り、インフレで支出が増えたとして財政ルールの柔軟化を要求した。
- 要求は支出ルールの緩和と、インフレによる税収増の扱いの二本立てとされるが詳細は未公表。
- 欧州委員会は「柔軟性は既に与えた」と回答し、追加の譲歩には慎重な姿勢を示している。
首相官邸で予算協議、委員長へ書簡
イタリアで来年度予算案(現地では「マノーヴラ」と呼ばれる予算法案)の策定が本格化する中、ジョルジャ・メローニ首相が欧州連合(EU)に対し、財政ルールの一段の柔軟化を強く求めている。ANSA通信やレプブリカ紙など現地主要メディアによると、首相はローマの首相官邸「パラッツォ・キージ」で閣僚や与党幹部と予算方針を協議するとともに、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長に書簡を送った。
書簡の趣旨は、インフレによって公的支出が押し上げられており、現行の支出ルールのままでは必要な政策を実行しにくいというものだ。首相は「柔軟性か、さもなければ制限的な措置か」という表現で、EUが歩み寄らなければイタリアは支出削減などの厳しい選択を迫られると訴えたと伝えられる。
「支出の柔軟化」と「税収の扱い」の二本立て
イル・ファット・クオティディアーノ紙は、首相の要求を二本立てだと整理している。一つは支出の伸びに関するルールの柔軟化、もう一つはインフレで名目上増えた税収の扱いだ。物価上昇は支出を増やす一方で税収も押し上げるため、その増収分を財政の余地として認めてほしいという考え方とみられる。ただし書簡の詳細な文言や具体的な金額は報道段階では明らかになっておらず、この整理には編集部の解釈も含まれる。
欧州委は「柔軟性は既に与えた」
これに対しブリュッセルの反応は冷ややかだ。欧州委員会側は「イタリアには既に柔軟性を与えている」と応じ、追加の譲歩には慎重な姿勢を示した。EUは2024年に財政ルールを改定し、各国が中期的な支出計画に基づいて段階的に債務を減らす仕組みへ移行した。その際、イタリアを含む複数の国に調整期間の延長が認められた経緯があり、欧州委はこれを「既に与えた柔軟性」と位置付けているとみられる。
背景:欧州有数の公的債務
イタリアは国内総生産(GDP)に対する公的債務残高がギリシャに次いでEUで最も高い水準にあり、財政赤字がEU基準を上回ったとして是正を求める手続きの対象にもなっている。支出ルールの緩和を求めるイタリアと、ルールの信頼性を守りたい欧州委の間には構造的な緊張があり、今回のやり取りもその延長線上にある。
今後は、イタリア政府が予算案を閣議決定しEUに提出する秋の財政手続きが山場となる。欧州委が追加の譲歩に踏み切るのか、イタリアが国内で支出の見直しを迫られるのかが焦点だ。巨額の政府債務を抱える日本にとっても、インフレ下で財政ルールをどう運用するかという論点は無縁ではない。
※本記事はイタリアの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:ANSA




