
この記事のポイント
- ポーランドで暗号資産規制法案が成立せず、4度目の立法の試みが報じられている。
- トゥスク首相は大統領側の修正提案を「純粋な悪」と強く批判したと伝えられる。
- 背景にはEU共通規則MiCAへの国内対応があり、政府と大統領の対立で整備が遅れている。
ポーランドで暗号資産規制法案が「4度目の挑戦」へ
ポーランドで、暗号資産(仮想通貨)を規制する法律をめぐる政府と大統領府の綱引きが続いている。現地報道によれば、法案は成立に至らないまま押し戻される展開を繰り返しており、地元メディアは今回の動きを「4度目の挑戦」と表現している。ドナルド・トゥスク首相は大統領側が示した修正提案について強い言葉で批判し、「純粋な悪」と評したと伝えられた。首相はまた、大統領側の対応に「パニックが見える」との趣旨の発言もしたとされる。
なぜ政府と大統領が対立するのか
ポーランドは議院内閣制で、日常の行政は首相と内閣が担う。一方、直接選挙で選ばれる大統領には法律への署名を拒む拒否権( veto )や、法案を憲法裁判所に送る権限があり、議会が可決した法律でも大統領が署名しなければ成立しない。この拒否権を覆すには下院(セイム)で高いハードルの再可決が必要で、事実上、政府と大統領の政治的立場が異なると立法が止まりやすい構造になっている。
2023年末に発足したトゥスク政権は中道・親EU路線を掲げる連立政権で、2025年に就任したカロル・ナブロツキ大統領は保守側に近い立場とされる。つまり現在のポーランドは、内閣と大統領の政治的な出身母体が異なる「ねじれ」の状態にあり、暗号資産法案はその対立が可視化された案件の一つと言える。今回は大統領側からも独自の法案が議会に提出されたと報じられており、政府案と大統領案が並走する形になっている。
背景にあるEUの共通ルール
この法案が急がれている背景には、EU(欧州連合)が導入した暗号資産市場規則「MiCA」がある。MiCAは暗号資産の発行者や交換業者に登録・情報開示・利用者保護などの義務を課す共通ルールで、EU加盟国は監督官庁の指定や罰則といった国内側の受け皿を法律で整える必要がある。ポーランドの場合、監督にあたるのは金融監督委員会(KNF)とされる。国内法の整備が遅れれば、事業者にとっては「どの機関にどう登録すればよいのか」が定まらない不安定な状態が続くことになる。
争点として現地で議論されているのは、監督当局にどこまで強い権限(口座の凍結やサービス遮断など)を与えるか、事業者の負担が過大にならないか、といった点だとされる。ただし、修正案の具体的な条文や、首相が「純粋な悪」と呼んだ対象が条文のどの部分を指すのかについては、報道からは細部まで確定できない。この記事では推測を避け、確認できる範囲にとどめる。
日本の読者にとっての意味
日本ではすでに暗号資産交換業者の登録制が定着しているが、EUではMiCAによって域内共通の枠組みづくりが進んでいる段階だ。ポーランドの事例は、共通ルールがあっても各国の国内政治の対立次第で導入が滞りうることを示している。制度の遅れは事業者の予見可能性を下げ、利用者保護の空白にもつながりかねない。政府と大統領の対立が今後どう決着するかは、ポーランドの暗号資産事業者にとって当面の最大の不確定要素であり続けそうだ。
※本記事はポーランドの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Gazeta




