
この記事のポイント
- スペイン最高裁が通称「孫の法」の運用を停止し、大きな波紋が広がっている。
- 与党PSOEの閣僚オスカル・ロペス氏が停止を「野蛮な行為」と強く批判した。
- 「孫の法」は内戦・独裁期の亡命者の子孫に国籍取得の道を開く規定の通称だ。
スペインで、最高裁判所(Tribunal Supremo)が通称「孫の法(Ley de Nietos)」の運用を停止したことをめぐり、政権与党側の閣僚が強い言葉で司法を批判し、論争になっている。
閣僚が「野蛮な行為」と非難
批判したのはオスカル・ロペス氏。スペイン社会労働党(PSOE、中道左派で現政権の中核)に所属する閣僚で、同党マドリード州組織の代表も務める人物として知られる。現地報道によると、ロペス氏は最高裁による停止の判断を「サルバハーダ(salvajada=乱暴きわまる行為、野蛮な仕打ち)」と表現し、さらに「祖国を救うつもりでいる裁判官がいる(hay jueces que son salvapatrias)」と述べたという。
「サルバパトリアス(salvapatrias)」は、「救う(salvar)」と「祖国(patria)」を組み合わせたスペイン語の造語だ。自らを国家の救世主とみなし、本来の職分を越えてふるまう人物、といった皮肉を込めた言い回しで、司法が政治的な動機で動いているという含意がある。閣僚が裁判所に向ける言葉としては、かなり踏み込んだ表現といえる。
そもそも「孫の法」とは
「孫の法」は正式な法律名ではない。2022年に施行された「民主記憶法(Ley de Memoria Democrática)」の中に置かれた、内戦やフランコ体制下の弾圧を逃れて国外に渡ったスペイン人の子や孫に、スペイン国籍取得の道を開く規定を指す通称である。対象となる人の多くはアルゼンチン、メキシコ、キューバなど中南米に暮らす移民の子孫で、申請は大量に寄せられ、受付期限や事務処理のあり方が繰り返し議論になってきた。歴史の清算と現在の国籍制度が交差する、スペイン特有の制度だ。
政治と司法の対立という文脈
今回の最高裁の判断が、具体的にどの範囲の手続きをどこまで止めるものなのかは、断片的な報道からは確定的には読み取れない。この点は今後の続報を待つ必要がある。
ただ背景としては、スペインで近年続く「政治と司法の緊張」という構図がある。左派連立政権が進めてきた歴史・記憶に関わる政策や司法制度の運用をめぐり、政権側が裁判所の判断を「政治的だ」と批判し、野党や法曹界が「三権分立への圧力だ」と反発する応酬は珍しくない。今回の発言も、その延長線上にあると見るのが自然だろう(これは一般的な文脈にもとづく推測である)。
国籍取得を待つ在外スペイン系の人々にとっては、手続きの停止そのものが生活設計に直結する。法の運用が司法判断で揺れる事態は、制度への信頼という点でも小さくない影響を残しそうだ。
※本記事はスペインの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:heraldo.es




