
この記事のポイント
- メルツ首相が住宅会社の社会化(公有化)を法律で禁じる方針を示し、論争が拡大している。
- 争点は補償付きで生産手段を公有化できるドイツ基本法15条で、実際の適用例はほぼない。
- 看板政策を封じられる形の左派党が猛反発し、選挙戦で追い風になるとの見方も出ている。
メルツ首相が「社会化の禁止」を打ち出す
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相(キリスト教民主同盟=CDU)が、住宅会社などを公有に移す「社会化(フェアゲゼルシャフトゥング)」を法律で禁じる考えを示し、国内で激しい論争が起きている。これに対し野党の左派党(ディ・リンケ)は、報道が「毒のある反応」と表現するほど強い言葉で反発し、政権批判を強めた。日本語では「収用」と訳されることが多いが、正確には補償を伴う所有形態の転換であり、無償で取り上げる意味ではない。
争点は憲法にあたる「基本法15条」
ドイツの憲法にあたる基本法(グルントゲゼッツ)15条は、土地や天然資源、生産手段を、補償と引き換えに公有や共同経済の形へ移すことを認めている。戦後ほとんど実際には使われてこなかった「眠れる条文」だが、家賃高騰が深刻な首都ベルリンでは、大手不動産会社が保有する大量の賃貸住宅を市の所有に移すべきだという主張の法的な足場として、近年あらためて注目されてきた。2021年にベルリンで行われた住民投票では賛成が過半数を占めたものの、法的拘束力はなく、具体化は進んでいない。
なぜ左派党は強く反発するのか
左派党にとって住宅の社会化は、単なる一政策ではなく党の看板ともいえる主張だ。都市部の若年層や賃貸世帯からの支持を集める柱でもあり、連邦レベルでそれを先回りして封じる法律をつくると言われれば、反発が激しくなるのは自然な流れといえる。一方のメルツ首相側は、投資家の予見可能性を損ない住宅供給を冷え込ませる、という立場から否定的だとみられる。ただし各発言の細かな文言は報道により幅があるため、断定は避けたい。
選挙をにらんだ駆け引きという見方も
現地の一部メディアは、この方針が結果的に左派党を利するのではないかという見立てを示している。争点を「社会化に賛成か反対か」に単純化すれば、その旗を最も明確に掲げる政党に注目が集まりうるからだ。あくまで論評レベルの推測であり、実際の影響は不透明である。
日本から見るとどう映るか
日本でも都市部の家賃や住宅価格の上昇は関心事だが、「民間の賃貸住宅を自治体の所有に移す」という選択肢が現実の政治日程に乗ること自体、日本ではまず見られない。住まいを市場に委ねるか公共財として扱うか——ドイツの論争は、その根本的な問いをそのまま映している。
※本記事はドイツの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:n-tv.de




