
この記事のポイント
- 中国で紅軍の長征勝利から90周年を迎え、官製メディアで長征精神をたたえる論評が相次いでいる。
- 長征は1934〜36年の紅軍の大移動で、中国では党と軍が危機を乗り越えた転機として語られている。
- 習指導部は今世紀半ばまでの「世界一流の軍隊」を掲げ、歴史の記憶を軍の近代化と忠誠強化に結びつけている。
長征勝利90周年で相次ぐ論評
中国で今年、「長征」の勝利から90周年を迎え、官製メディアで記念の論評や特集が続いている。中国共産党の理論誌『求是』などには「長征精神によって世界一流の軍隊を鍛え上げる」と題した論調が載り、党の歴史の象徴的な出来事を、いまの軍の近代化と結びつけて語る姿勢がはっきり出ている。
「長征」とは何か
長征は、1934年から1936年にかけて、共産党が率いる紅軍(中国工農紅軍、人民解放軍の前身)が国民党軍の包囲を逃れて、江西省などの拠点から中国西北部の陝西省方面へ移った大移動のことだ。中国では「二万五千里の長征」と呼ばれ、険しい山や大河を越えた苦しい行軍として語り継がれてきた。出発地の一つとされる江西省の于都河や、雪山として知られる四川省の夾金山などは、いまも記念地として整備されている。
中国の公式な歴史観では、長征は党と軍が存亡の危機を乗り越え、その後の革命の勝利につながった転機とされる。「どんな困難にも屈しない」「理想と信念を堅持する」といった価値を表す言葉として「長征精神」が使われ、指導部の演説にもたびたび出てくる。
なぜいま「世界一流の軍隊」なのか
習近平指導部は、今世紀半ばまでに人民解放軍を「世界一流の軍隊」にするという目標を掲げている。2027年の建軍100年に向けた中間目標も示されており、装備の近代化と並んで、軍の党への忠誠や規律の強化が重視されている。
今回の論調は、こうした方針を歴史の記憶と結びつけ、軍人や若い世代に精神面の支えを示す狙いがあるとみられる。長征の苦難を「新時代の長征」になぞらえ、国内外の課題に立ち向かう心構えを説く表現は、中国の政治的な言葉づかいでは定番になっている。記念展の開催や若手幹部の見学など、各地で行事が行われているとも伝えられている。
日本から見るポイント
こうした記念行事や論評は、中国国内に向けた政治教育の色合いが強い。一方で、軍の近代化目標をあらためて打ち出す場にもなっており、周辺国にとっては中国の国防方針の方向性を読み取る手がかりにもなる。歴史の記念と現在の軍事政策がどう結びつけられているかは、今後の指導部の発信を見るうえでも注目したい点だ。
※本記事は中国の現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:求是




