
この記事のポイント
- 副大統領府の機密費受領書に記された氏名について、弁護側は身元保護のための仮名だと主張している。
- 受領者1287人分が統計庁の民事登録記録で確認できず、1965年に死亡した乳児の名も含まれると報じられた。
- 公的記録自体の登録漏れを指摘する声もあり、2028年大統領選をにらんだ権力闘争の側面が強い。
フィリピンで、サラ・ドゥテルテ副大統領をめぐる「機密費(confidential funds)」の使途疑惑が、政治の中心的な争点になっています。焦点になっているのは、副大統領府(OVP)が支出したとされる資金の受領書に記された数多くの氏名です。現地報道によれば、弁護側は「受領書に書かれている名前は本名ではなく仮名(エイリアス)だ」と説明し、実在の人物と一致しないのは想定内だという立場を取っています。
「機密費」とは何か
フィリピンの予算制度には、治安・情報収集に関わる支出として「機密費」「情報活動費」と呼ばれる枠があります。日本の官房機密費に近い性格で、通常の会計監査のように支出先を公開する義務が緩く、監査委員会(COA)が特別な手続きで確認する仕組みです。日本の読者には馴染みが薄い制度ですが、フィリピンでは以前から「使途が見えない公金」として批判の対象になってきました。副大統領府や、副大統領が兼務していた教育省にこの枠が計上されたことが、そもそもの議論の出発点です。
受領書の名前と公的記録が合わない
報道によると、機密費の受領者として記載された人物のうち1287人について、フィリピン統計庁(PSA)の民事登録記録(出生・婚姻・死亡などの戸籍にあたる記録)に該当が見つからなかったとされます。さらに、1965年に生後2カ月で亡くなった乳児の名前が受領者リストに含まれていた、という指摘も現地紙が伝えています。数字や個別事例は審理の過程で示されたもので、最終的な事実認定はこれからです。
弁護側の説明と、反論
弁護側の主張の骨格は明快です。情報提供者や協力者の身元を守るため、あえて偽名を使うのは機密活動の常識であり、記録と一致しないことは不正の証明にならない、という論理です。一方で、追及する側は「仮名だと認めるなら、実際に誰にいくら渡ったのかを検証する手段が失われる」と反発しています。
審理では、公的記録そのものの限界を指摘する声も出ています。上院側からは、PSAの記録には登録漏れなど不備があり得るため、記録に無いことだけを根拠に受領者の実在を否定するのは慎重であるべきだ、という趣旨の指摘があったと伝えられます。フィリピンでは地方や貧困層で出生登録が行われていないケースが実際に存在し、この論点は単なる政治的な擁護とも言い切れません。
なぜ日本から見ても重要か
サラ氏はロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の娘で、2022年の選挙ではマルコス大統領と組んで圧勝しました。その両陣営が決裂した末に進んでいるのが今回の手続きであり、2028年の大統領選をにらんだ権力闘争という側面が濃厚です。有罪となれば公職追放につながり得るため、判断は次の政権構図を大きく左右します。日本にとってもフィリピンは安全保障・経済の重要なパートナーであり、その政治の安定度を測るうえで見過ごせない裁判といえます。
※本記事はフィリピンの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Rappler




