
この記事のポイント
- ドイツの最新PISA調査結果が過去最低水準となり、読解力など基礎学力の低下が鮮明になった。
- 背景には言語支援の必要な生徒の増加やコロナ禍の学習遅れがあるが、原因の特定は難しい。
- ヘッセン州では教員の精神的不調や人員不足も報告され、教える側の疲弊も深刻化している。
ドイツで「過去最低」の衝撃
ドイツの教育界がまた重い数字を突きつけられました。最新のPISA(ピザ/国際学習到達度調査)で、ドイツの成績がこれまでで最も悪い水準になったと現地メディアが相次いで報じています。専門家からは「ドイツでPISAの枠組みで測定された中で最低の結果」という趣旨の指摘も出ており、単年の揺らぎでは片づけにくい状況だと受け止められています。
PISAはOECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う15歳を対象とした国際調査で、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーを測ります。日本でも順位が出るたびに話題になりますが、ドイツにとってPISAは特別な意味を持つ言葉です。2000年の第1回調査で予想外の低成績となり、「PISAショック」と呼ばれる教育論争が全国的に巻き起こった経緯があるからです。今回の結果は、その後の四半世紀の改革が十分な成果を上げられていないのではないか、という問いを改めて突きつけています。
「生徒層が変わった」という言葉の意味
報道の見出しに使われた「生徒層が変わった(Die Schülerschaft hat sich verändert)」という表現は、ドイツの教育論議のキーワードになっています。背景として一般に指摘されるのは、家庭で話される言語がドイツ語以外である児童生徒の増加、コロナ禍の休校で生じた学習の遅れ、そして家庭の経済状況と学力の結びつきの強さです。ドイツは移民・難民の受け入れ規模が大きく、学校が言語習得の支援まで担う場面が増えています。
ただし、こうした要因のうち何がどの程度効いているのかを一つに特定することはできません。「移民が原因」といった単純化はドイツ国内でも強く批判されており、むしろ言語支援や就学前教育に十分な人員と予算を配分できていない制度側の問題として語られることが多い点は、日本の読者も押さえておきたいところです。
疲弊する教育現場
学力の数字と並んで報じられているのが、教える側の消耗です。ヘッセン州(フランクフルトを擁するドイツ中部の州)では、教員の精神的な不調、生徒の学習の遅れ、そして慢性的な人員不足が報告されていると伝えられました。ドイツは教育行政の権限が連邦ではなく各州にあり、カリキュラムも教員採用も州ごとに異なります。それだけに、州によって課題の深刻さや対応にばらつきが出やすい構造です。
読解力をはじめとする基礎的な能力の低下は、若い世代の職業訓練や進学の選択肢を狭め、長期的には労働力の質にも響きます。人手不足が深刻なドイツ経済にとって、教育の問題は将来の競争力の問題でもあります。
日本から見たときの含意
日本は読解力の落ち込みが議論になった時期を経て、直近のPISAでは比較的良好な結果を維持してきました。とはいえ、教員の長時間労働や人材確保の難しさ、家庭環境による学力差といった論点はドイツと重なります。ドイツの「過去最低」は、学校というシステムに何をどこまで背負わせるのかという問いを、他人事ではない形で投げかけていると言えそうです。
※本記事はドイツの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:WELT




