
この記事のポイント
- 訴追側が証人15人を取り下げ、副大統領本人の尋問を求める方針に転換した。
- 狙いは審理の長期化回避だが、立証の厚みを削るリスクも指摘されている。
- 本人を強制的に証言させられるかは憲法解釈が分かれ、2012年の前例が参照されている。
フィリピンで続くサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判をめぐり、訴追側(下院から選ばれた検察役の議員団)が予定していた証人15人を取り下げ、代わりに副大統領本人を証言台に立たせることを求める方針を示したと、現地各紙が伝えています。地元紙セブ・デイリー・ニュースやインクワイアラーなどが報じたもので、長期化が見込まれていた審理の進め方が大きく変わる可能性があります。
そもそもフィリピンの弾劾裁判とは
フィリピンの弾劾制度は、下院が訴追(弾劾の議決)を行い、上院が裁判所として審理・評決する二段構えになっています。日本にはない仕組みで、米国の制度に近い形です。有罪となるには上院議員の3分の2以上の賛成が必要とされ、上院の定数は24議席のため、実務上は16票が一つの目安として語られます。評決は議員一人ひとりの投票で決まるため、現地報道では「票読み」が常に注目材料になります。
なぜ証人を取り下げるのか
訴追側が多数の証人を落とす判断は、審理の長期化を避け、争点を絞り込む狙いがあると受け止められています。証人が増えれば反対尋問の時間も膨らみ、審理は数か月単位で延びかねません。訴追側の一員である弁護士出身のチェル・ディオクノ氏も、争いのない証拠については相手方が事実と認めれば裁判を短縮できるとの考えを示したと報じられています。ただし、証人を減らすことは立証の厚みを削ることにもつながるため、諸刃の剣だという見方も一般論としてあり得ます。
本人を証言台に立たせられるのか
最大の焦点は、副大統領本人を召喚できるかどうかです。フィリピン憲法には自己に不利な供述を強いられない権利(黙秘権に相当する保障)が定められており、弾劾裁判で被告席に立つ本人を強制的に証言させられるのかは、専門家の間でも解釈が分かれる論点です。現地メディアは、2012年に当時の最高裁長官が弾劾裁判で罷免されたコロナ事件を引き合いに出しています。同事件では本人が自ら証言台に立った経緯があり、今回も「自発的に出るか否か」が鍵になるとの指摘が出ています。もっとも、上院がどう判断するかは現時点で確定しておらず、推測の域を出ません。
日本の読者が押さえておきたい背景
サラ・ドゥテルテ氏はドゥテルテ前大統領の娘で、2022年の選挙で副大統領に就きました。フィリピンでは大統領と副大統領が別々に選ばれるため、両者が同じ政治勢力とは限りません。今回の裁判は、次の国政選挙をにらんだ有力政治家の資格問題という側面もあり、単なる法廷闘争にとどまらない意味を持っています。日本でも人材交流や経済面で結び付きの強い国だけに、政局の行方は注視に値します。
※本記事はフィリピンの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Cebu Daily News




