
この記事のポイント
- 韓国の少数政党議員ヨン・ヘイン氏への追及が、選挙制度の抜け穴をめぐる議論へと広がっている。
- 二大政党は比例議席を守るため「衛星政党」を作り、比例代表制の趣旨を実質的に骨抜きにしてきた。
- 改革案は複数あるが議席配分に直結するため、二大政党の合意形成は容易ではないとみられる。
韓国で、小規模政党に所属する国会議員ヨン・ヘイン(용혜인)氏をめぐる政治的な論争が、思わぬ形で「選挙制度そのものを見直すべきだ」という議論に火をつけている。批判の矢面に立っているのは、実はヨン氏個人だけではない。韓国政界で長年問題視されてきた「衛星政党(위성정당)」という慣行そのものだ。
「衛星政党」とは何か
韓国の国会は一院制で定数300。日本と同様に、選挙区で選ばれる議員と、政党の得票率に応じて配分される比例代表の議員がいる。2020年の総選挙から導入された「準連動型比例代表制」は、選挙区で議席を取りにくい小規模政党にも比例議席が回りやすくすることを狙った仕組みだった。
ところが二大政党――保守系の「国民の力」と、現在の与党である革新系「共に民主党」――は、比例代表専門の別政党を立ち上げ、そこに自陣営の比例票を流し込むことで、議席の目減りを回避した。これが「衛星政党」と呼ばれる手法で、日本の読者向けにたとえるなら、比例票だけを受け取るための別看板を選挙のたびに用意するようなイメージだ。制度の趣旨を骨抜きにする抜け穴として、韓国では選挙のたびに批判されてきた。
なぜヨン・ヘイン氏が発火点になったのか
ヨン氏は「基本所得党」というごく小規模な政党の中心人物で、二大政党が主導した比例名簿の枠組みを経て国会入りした経緯がある。現地報道によると、李在明(イ・ジェミョン)大統領による人事指名を受けたことをきっかけに、「国民の力」が指名の撤回を要求。党運営が身内中心だとする「家族政党」批判や、議員との兼職をめぐる指摘が相次いだ。
ヨン氏側はこれに正面から反論し、緊急記者会見を開いて「兼職は法律が認めている」「家族政党という表現は侮辱だ」と述べ、検証を装った攻撃だとの認識を示したと伝えられている。指名の対象となった具体的な役職や手続きの詳細については報道ごとに扱いが異なるため、ここでは断定を避ける。
この応酬の過程で浮かび上がったのが、そもそも小規模政党の議員が二大政党の作った衛星政党を経由して議席を得ざるを得ない構造こそが歪みの根源ではないか、という論点である。批判する側の二大政党自身が衛星政党を作った当事者であるため、追及すればするほど自らの過去にも刃が向かうという皮肉な構図になっている。
制度改革は本当に動くのか
衛星政党を防ぐ案としては、比例配分を完全な連動型に切り替える、政党分割や名簿の「貸し借り」に制限を設ける、といった方向性が過去にも取り沙汰されてきた。もっとも、議席配分のルール変更は二大政党の議席数に直結するため、合意形成は容易ではない。一般論として、選挙制度改革は次の総選挙が近づくほど各党の損得計算が前面に出やすく、今回の論争がそのまま制度変更に結び付くと見るのは早計だろう。
※本記事は韓国の現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:한겨레




