
この記事のポイント
- 政権が州知事に対し、予備選PASO廃止に賛成する場合のみ選挙協力すると通告したと報じられた。
- PASOは2011年導入の義務的な全国一斉予備選で、費用や形骸化への批判が以前からある。
- 連邦制のアルゼンチンでは知事の影響力が大きく、少数与党の政権は個別交渉に頼らざるを得ない。
「PASO廃止に賛成しない知事とは組まない」
アルゼンチンの中央政府が、各州の知事に対して事実上の「最後通告」を突きつけたと現地紙が伝えています。伝えられる内容は明快で、自分の系列の国会議員に「PASO廃止(あるいは停止)に賛成票を投じよ」と指示する知事とだけ、来たる選挙で協力関係を結ぶ——というものです。選挙制度の議論が、そのまま政治的な取引材料として使われている構図です。
そもそもPASOとは何か
PASO(パソ)は「開かれた・同時の・義務的な予備選挙」の略称で、アルゼンチンで2011年から実施されている仕組みです。各政党が本選挙に出す候補者を、全有権者が参加する形の予備選で事前に絞り込みます。日本でいえば、各党の候補者選びを国が全国一斉の投票として実施するようなイメージで、有権者にとっては本選挙の前にもう一度投票日が来ることになります。
この制度には以前から「費用がかかりすぎる」「候補者が実質一人しかいない党にとっては単なる人気投票にすぎない」といった批判があり、歴代政権のもとでも廃止・停止論が繰り返し浮上してきました。緊縮と歳出削減を掲げるミレイ政権にとっては、廃止を主張しやすいテーマでもあります。
なぜ知事が鍵を握るのか
アルゼンチンは連邦制の国で、州知事の政治的影響力が非常に大きいことで知られます。上下両院の議員の多くは州単位の名簿で選ばれるため、知事が地元選出議員の投票行動を左右できる場面が少なくありません。国政で少数与党の立場にあるミレイ政権は、法案を通すうえで知事との個別交渉に頼らざるを得ず、今回の「選挙協力」という見返りもその延長線上にあると見られます。
票は足りているのか
一方で、廃止に必要な票が現時点で揃っているかどうかは不透明だと報じられています。大統領の妹で政権中枢を担うカリナ・ミレイ氏が、同盟勢力へのさらなる働きかけを求めたとされる一方、野党側には「停止までなら通るかもしれない」との見方もあるようです。完全な廃止か一時停止かで着地点が変わる可能性があり、最終的な結論は議会での採決を待つ必要があります。
選挙の「ルールそのもの」を選挙直前に変えようとする動きは、どの国でも与野党の力関係を映す鏡になります。アルゼンチンの今回の攻防も、制度論の顔をした権力闘争という側面が濃く、今後の交渉次第で展開が大きく動く可能性があります。
※本記事はアルゼンチンの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:La Nación




