
この記事のポイント
- 豪の右派政党One Nationが移民を75万人規模で削減する政策を発表した。
- 狙いは出国が入国を上回る「純移民マイナス」で、同党はこれを息継ぎ策と説明。
- 労働力不足や経済成長への打撃を懸念する警告も現地報道で出ている。
右派政党が「移民75万人削減」を打ち出す
オーストラリアの右派政党「One Nation(ワンネーション)」が、移民の受け入れを大幅に絞り込む政策を発表した。報じられているところでは、削減規模は75万人規模とされ、同党はこれを国に「breathing space(息をつく余地)」を与えるための措置だと位置づけている。狙いは、入国者数が出国者数を下回る「net-negative migration(純移民のマイナス化)」、つまり差し引きで人口が移民によって増えない状態をつくることにあるという。
One Nationは1990年代にポーリン・ハンソン氏が創設した政党で、移民制限やナショナリズム色の強い主張で知られる。連邦議会では上院に議席を持つ少数政党という位置づけで、単独で政策を実現できる立場にはない。ただ、移民や物価をめぐる有権者の不満が高まる局面では、こうした主張が世論や二大政党(中道左派の労働党と中道右派の自由党・国民党連合)の政策論議に影響を与えることがある。
背景にある「移民と住宅」の議論
オーストラリアでは近年、新型コロナ禍で国境を閉ざした反動もあり、留学生や技能移民の流入が大きく伸びた時期があった。これに住宅価格・家賃の高騰や、都市部のインフラ逼迫が重なり、「移民が多すぎるのではないか」という議論が政治の主要テーマの一つになっている。日本でも人手不足と外国人材受け入れの議論があるが、オーストラリアは人口に占める海外生まれの割合が3割前後と高く、移民が人口増加の主要な要因になってきた点が大きく異なる。
「繁栄を損なう」との警告
一方で、今回の案には経済面からの批判が出ている。現地報道では、移民の大幅削減が経済や豊かさを傷つけるリスクがあるとの警告が伝えられている。一般論として、移民を急激に絞れば、建設・医療・介護・農業といった人手に頼る分野の労働力不足が深刻化し、留学生に依存する教育産業の収入も細る。さらに、若い働き手が減ることは高齢化のペースを速め、税収基盤を弱める方向に働く。住宅不足の緩和という効果が期待される半面、住宅を建てる職人自体が不足すれば供給はかえって滞る、という指摘も従来からある。
どの水準の移民受け入れが適切かは、専門家の間でも評価が分かれるテーマだ。現時点で判明しているのは一政党の公約であり、実際に制度として動き出すかどうかは別問題である。ただ、生活費の高さと住宅難が有権者の関心の中心にある間は、移民をめぐる論争がオーストラリア政治の火種であり続ける可能性は高い。
※本記事はオーストラリアの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:The Guardian




