
この記事のポイント
- タイの弁護士団体が、選挙管理委員会の職務怠慢を主張し汚職防止委に調査を申し立てた。
- 根拠はタイ刑法157条で、公務員の職務違反を問う「定番の条文」とされる。
- 上院選の談合疑惑を調べる側だった選管が、逆に調べられる側に回る構図となっている。
タイで、上院(元老院)議員の選出をめぐる「談合」疑惑の捜査が、選挙を管理する側である選挙管理委員会(ECT、タイ語の略称は「กกต.」)自身に飛び火している。タイの弁護士団体(สมาคมทนายความ=弁護士協会)が、国家汚職防止取締委員会(NACC、タイ語略称「ป.ป.ช.」)に対し、選管の委員らが職務を怠り、一部の上院議員が立件を免れるよう有利に取り計らったのではないかとして、調査を求める申し立てを行った。
申し立ての中身と「刑法157条」
弁護士団体側の主張は、選管が談合疑惑の捜査・立件にあたり、本来であれば対象に含めるべき人物を外した、あるいは手続きを尽くさなかった、というものだ。根拠として挙げられているのがタイ刑法157条。公務員が違法に職務を行使したり、逆に職務を怠ったりして他者に損害を与えた場合に問われる罪で、日本の職権濫用罪に近い位置づけにあたる。タイでは政治家や公務員の責任を追及する際に頻繁に持ち出される「定番の条文」として知られている。
申し立て先のNACCとは
NACCは、政治家や高級公務員の汚職・職務違反を調査するタイの独立機関だ。調査で容疑が固まれば司法手続きに進む仕組みで、閣僚や他の独立機関の委員であっても対象になり得る。ただし、こうした申し立てが実際に受理され、正式な調査に発展するかどうかはNACC側の判断次第であり、現時点で結論は出ていない。
背景にある上院選の談合疑惑
タイの上院は、一般有権者による直接選挙ではなく、職業分野ごとに立候補者が互いに投票し合うという独特の方式で選ばれる。この仕組みは以前から「国民の代表性が薄い」「組織票をつくりやすい」と指摘されており、直近の選挙後には、特定の勢力が事前に票を割り振っていたのではないかという「ฮั้ว(フア=談合)」疑惑が浮上した。捜査当局と選管が並行して調べを進めてきた経緯がある。
「審判」が調べられる側に回る構図
今回の焦点は、疑惑を調べる立場だった選管そのものが、今度は調べられる側に回りかねない点にある。選挙管理機関の中立性が争点化すれば、選挙結果そのものの正統性にも疑問符がつきかねない。タイでは独立機関の判断が政局を大きく左右してきた経緯があり、この申し立ても法的な争いと政治的な駆け引きの両面で見る必要がある。一般論として、こうした申し立ては結論が出るまでに長い時間を要することが多く、現段階で選管側の違法性が認定されたわけではない点には注意が必要だ。
※本記事はタイの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Matichon Online




