
この記事のポイント
- オーストラリアの野党・保守連合が、移民政策の見直し案で留学生向けの卒業生ビザ廃止を打ち出したと報じられた。
- 住宅高騰などを背景に移民削減を求める世論が強まり、右派ワン・ネーションへの支持流出を防ぐ狙いもあるとされる。
- 教育業界は先行きを悲観し、インドとの自由貿易協定に反し経済に打撃を与えるおそれがあると懸念する声も出ている。
野党連合が「卒業生ビザ」の廃止を打ち出す
オーストラリアで、野党の保守連合(自由党と国民党の連合。「コアリション」と呼ばれる)がまとめた移民政策の見直し案が話題になっています。公共放送ABCによると、この案では留学生が大学などを卒業した後も国内で働き続けられる「卒業生ビザ」が廃止の対象になっています。卒業生ビザは正式には「一時卒業生ビザ」と呼ばれ、留学生にとっては、学位を取った後に現地で職務経験を積み、永住権を目指すための入り口とされてきました。
背景にある移民急増への不満
オーストラリアは移民を多く受け入れて経済成長を続けてきた国です。一方で近年は、新型コロナ後に入国者が急に増えたことで、住宅価格や家賃の高騰、インフラ不足を移民と結びつけて考える世論が強まっています。現地紙の論評では、保守連合を率いるテイラー氏の案は、移民の大幅削減を掲げるポーリン・ハンソン氏の右派政党「ワン・ネーション」に支持が流れるのを食い止めるため、「中間の道」をねらったものだと分析されています。ただ、報道に出ている見出しや要約だけでは、削減の規模や実施の時期といった具体的な中身ははっきりしません。
教育業界と通商面からの懸念
留学生の受け入れは、オーストラリアにとって最大級の「サービス輸出」で、大学の財政を支える柱でもあります。経済紙AFRは、与野党がそろって留学生の削減に傾いていることから、教育業界の先行きは「暗い」と伝えています。また英ガーディアン紙によると、支援団体は、今回の案がインドとの自由貿易協定に反するおそれがあり、経済に打撃を与えかねないと警告しています。インドはオーストラリアにとって主要な留学生の送り出し国のひとつで、協定には卒業後の就労機会に関する取り決めも含まれているとされます。もし廃止に踏み切れば、外交や通商の問題に発展する可能性もあります。
日本への示唆
オーストラリアは、日本の若者にとっても留学やワーキングホリデーの行き先として人気があります。今回の議論の対象は主に卒業生ビザで、ほかの制度にどう影響するかは今のところ分かりません。とはいえ、オーストラリアの移民政策が引き締めの方向に向かっていることは、留学を考えている人にとって注目すべき動きと言えます。今後の総選挙に向けて、各党の移民政策の違いが大きな争点になるとみられます。
※本記事はオーストラリアの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:ABC News & Headlines – Australian Broadcasting Corporation




