
この記事のポイント
- フィリピン下院のデリマ議員、ディオクノ議員ら10人が、駐フィリピン中国大使の召還を求めた。
- 背景には南シナ海の領有権をめぐる中比の対立があるとみられるが、直接のきっかけは報道からは確認できない。
- 大使の召還や国外退去を決めるのは大統領と外務省で、マルコス政権がどう応じるかが焦点になる。
下院議員10人が中国大使の「召還」を要求
フィリピンで、下院議員10人が駐フィリピン中国大使の召還を求めたと、現地メディアのラップラーなどが報じました。中心となったのは、レイラ・デリマ議員とチェル・ディオクノ議員です。報道の見出しから分かるのは「ほかの8人の下院議員とともに召還を求めた」という点までで、要求の細かい文言や直接のきっかけについては、手元の情報だけでは確認できません。
中心となった2人の議員とは
デリマ氏は元司法相・元上院議員です。ドゥテルテ前政権の「麻薬戦争」を厳しく批判したことで知られ、その後、麻薬取引への関与を理由に長く拘束されていましたが、のちに無罪となりました。ディオクノ氏は著名な人権派弁護士です。2人とも現在は、少数派の声を議会に届けるための「政党リスト制」で選ばれた下院議員で、人権や主権の問題に積極的に発言する立場にあります。
背景にある南シナ海の対立
フィリピンと中国は、南シナ海の領有権をめぐって長く対立しています。フィリピンは自国の排他的経済水域(EEZ)にあたる海域を「西フィリピン海」と呼んでいます。2016年には、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が中国の主張する「九段線」には法的根拠がないと判断しましたが、中国はこの判断を受け入れていません。現在のマルコス政権のもとでは、中国海警局の船がフィリピンの船に放水するなど、海上でのにらみ合いが繰り返されてきました。
今回の召還要求も、こうした対立の延長線上にあるとみられます。ただし、大使館側のどの言動が直接の理由になったのかは、今回の報道の要約からは断定できません。
「召還要求」の意味と今後の焦点
外交の世界で「大使の召還を求める」というのは、相手国に対して大使を本国へ呼び戻すよう求めることを指します。さらに強い手段として、外交官を「好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)」と通告し、事実上の国外退去を求める方法もあります。こうした決定を下すのは議会ではなく、大統領と外務省です。そのため、今回の要求がそのまま実行されるとは限りません。
フィリピンにとって中国は最大級の貿易相手国でもあります。安全保障上の対立と経済的な結びつきをどう両立させるかは、マルコス政権にとって難しい課題です。現地では、強い対応を求める声がある一方で、言葉の応酬を控えて対話を重視すべきだとする論調も見られます。政府がこの要求にどう応じるかが注目されます。
※本記事はフィリピンの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:Rappler




