
この記事のポイント
- オランダの15歳の読解力が3年前の前回調査からさらに低下したと現地各紙が報じた。
- 約4割が最低到達水準に届かず、日常生活に支障が出る機能的非識字が懸念されている。
- 教育界では読み書き計算という基礎への回帰を求める声が強まるが、原因は複合的との指摘も根強い。
「4割が最低水準に届かない」——オランダに走った衝撃
オランダの主要メディア各紙が、同国の15歳の読解力が3年前の前回調査からさらに低下したと相次いで報じた。NRC(オランダの有力全国紙)やNOS(公共放送)によれば、15歳のおよそ4割が読解力の「最低到達水準」に達しておらず、このままでは実生活で必要な読み書きに支障をきたす「機能的非識字(laaggeletterdheid)」に陥る恐れがあるという。
ここで言う「最低水準」とは、テストの点数が低いという以上の意味を持つ。契約書や役所からの通知、薬の説明書、求人票といった日常の文書を読んで内容を正しく理解し、必要な行動を取れるかどうかの線引きに近い。オランダで使われる laaggeletterdheid(低識字)という語も、文字がまったく読めない状態ではなく、「読めるが使いこなせない」層を指す概念として定着している。日本語の「非識字」より、はるかに身近な問題として受け止められている点は押さえておきたい。
低下は今回が初めてではない
オランダの読解力低下は、突然現れた数字ではない。OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに実施する国際学習到達度調査(PISA)では、同国の読解力は2000年代に上位グループにいたものの、その後は回を追うごとに順位・スコアともに下降してきた。今回の報道も、この長期トレンドが反転しなかったことを示す内容として受け止められている。数学や科学に比べ、読解力の落ち込みが目立つのもオランダの特徴とされてきた。
低下の背景として現地でしばしば挙げられるのは、教員不足による授業の質のばらつき、スマートフォンや動画への時間移行による「長い文章を読む経験」の減少、そして読解指導が断片的な設問対策に偏り、まとまった本を読み通す機会が減ったという指摘だ。ただし、どの要因がどれだけ効いているかを一つの原因に断定できる段階ではなく、専門家の間でも見解は分かれている。現地報道でも「原因はひとつではない」との趣旨の論調が見られる。
「基礎に戻れ」という議論
今回の報道を受け、オランダの教育界では「学校は読み・書き・算数という基本に立ち返るべきだ」という主張が改めて前面に出ている。近年の学校教育は市民性教育やデジタル技能、探究型の学びなど扱う領域が広がってきたが、その分だけ基礎学力に割く時間が薄まったのではないか、という問題意識だ。
一方で、授業時間の配分を変えるだけでは解決しないという反論もある。教員の確保、移民背景を持つ子どもへの言語支援、家庭の読書環境といった学校外の条件が絡むためだ。オランダは移民・多言語家庭の割合が高く、家庭でオランダ語以外を話す子どもの言語習得支援は長く政策課題になってきた。
日本から見て、他人事ではない理由
日本の15歳の読解力もPISAで変動を繰り返し、低下が報じられるたびに議論が起きてきた点はオランダと共通する。スマートフォンの普及、長文に触れる時間の減少、教員の多忙といった条件もよく似ている。オランダの議論が示しているのは、「読める/読めない」の二分ではなく、社会生活を送るのに足りる読解力を持つ人がどれだけいるか、という問いの立て方だ。読解力は進学や就職だけでなく、行政手続きや医療、契約、そして情報の真偽を見分ける力に直結する。オランダで今起きている危機感は、その意味で普遍性を持っている。
※本記事はオランダの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:NRC - Nieuws, achtergronden en onderzoeksjournalistiek




