
この記事のポイント
- 中国の公式メディアが習近平主席主導の「大BRICS協力」を前面に打ち出している。
- BRICSは条約同盟ではなく、首脳会議を軸としたゆるやかな新興国の協議体である。
- 拡大で内部の利害は多様化し、スローガンと具体策の間には距離があるとみられる。
中国国内で強調される「大BRICS協力」というキーワード
中国の党理論誌『求是』などの official メディアで、習近平国家主席が「大BRICS協力(大金磚合作)」の質の高い発展を主導している、という論調が前面に出ています。中国外交部(日本の外務省にあたる)も、習主席のBRICS首脳会合出席に関する日程を説明しており、中国国内ではBRICSが当面の外交上の重点テーマとして扱われている状況がうかがえます。
ここで言う「大BRICS協力」とは、中国側が用いる政治的なキャッチフレーズで、加盟国が増えて枠組みが拡大したBRICSを、さらに広い新興国・途上国のネットワークへと発展させていく、という含意で使われています。中国語の「金磚(きんせん)」は「金のレンガ」を意味し、BRICSの中国語訳です。
そもそもBRICSとは何か
BRICSは、ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの頭文字から生まれた枠組みです。もともとは2000年代初頭に投資銀行のアナリストが成長著しい新興経済国を指して使った造語で、それが後に当事国による実際の首脳会議の枠組みへと発展したという、やや珍しい経緯を持ちます。近年は参加国が拡大し、中東・アフリカ・南米などの新興国が加わることで、当初の5カ国から大きく姿を変えています。日本の読者にとっては「G7に対する新興国側の集まり」と捉えると分かりやすいでしょう。
ただし、BRICSはNATOやEUのような条約に基づく同盟・統合組織ではありません。共通の議会も強制力のある決定機構も持たず、首脳会議と閣僚級の対話、そして新開発銀行(NDB)などの実務的な仕組みを中心とした、ゆるやかな協議体です。この「ゆるさ」が、参加国を増やしやすい一方で、まとまった行動を取りにくい要因にもなっています。
中国がBRICSに込める狙い
中国がBRICSを重視する背景には、米国主導とされる既存の国際秩序に対して、新興国・途上国の発言力を高めたいという一貫した立場があります。中国の公式メディアが使う「グローバルサウス」という表現も、その文脈で頻出するキーワードです。グローバルサウスとは、主に南半球に多く分布するアジア・アフリカ・中南米などの新興国・途上国を総称する言葉で、明確な加盟リストがあるわけではありません。
中国は自らをその一員と位置づけつつ、国際金融機関における投票権の配分見直しや、貿易・決済の多角化、気候変動やデジタル分野での協調といった論点を、BRICSの場で押し出す傾向があります。もっとも、これらは中国側の発信に基づく位置づけであり、参加国すべてが同じ優先順位を共有しているとは限りません。
日本から見た読みどころ
枠組みが拡大したことで、BRICS内部の利害はむしろ多様になっています。エネルギー輸出国と輸入国、対米関係の距離感、地域紛争をめぐる立場など、参加国ごとの事情は一様ではありません。したがって「BRICSが一枚岩で結束を強めている」と単純に読むのは早計で、中国が掲げるスローガンと、実際に合意できる具体策との間には距離があるとみるのが妥当でしょう。
一方で、資源やサプライチェーン、人口規模の面でBRICS圏が世界経済に占める比重は小さくありません。日本企業にとっては、どの国とどの分野で協力が具体化するのかを個別に見ていく視点が求められます。中国が今後の首脳会合でどのような提案を打ち出すのか、そしてそれが他の参加国にどこまで受け入れられるのかが、当面の注目点になりそうです。
※本記事は中国の現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:求是




