
この記事のポイント
- メキシコ首都圏で出ていた大気環境の緊急措置が解除され、強化されていた規制が通常運用に戻った。
- 緊急時は自動車規制「オイ・ノ・シルクラ」の対象が拡大し、多くのドライバーの足に影響が出る。
- 標高2200mの盆地に人口が集中する地形的条件が、オゾンなど大気汚染の再発を招いている。
メキシコ首都圏で「環境緊急事態」が解除
メキシコの首都メキシコ市(シウダー・デ・メヒコ、略してCDMX)とその周辺自治体からなる「メキシコ盆地首都圏(ZMVM)」で出されていた大気環境の緊急措置が解除されたと、現地紙ラ・ホルナダやレフォルマなどが報じました。判断を担うのは、首都圏の環境行政を調整する広域機関「大気環境委員会(CAMe)」です。日曜の時点では措置が継続されていましたが、その後に大気の状態が改善し、解除に至ったかたちです。
「コンティンヘンシア・アンビエンタル」とは何か
日本ではあまり耳慣れない制度ですが、スペイン語で「contingencia ambiental(大気環境の緊急事態)」と呼ばれる仕組みは、メキシコ首都圏の生活に深く根づいています。大気中のオゾンや微小粒子状物質(PM2.5、PM10)の濃度が基準を超えると、段階的に「第1段階」「第2段階」といった警報が発令されます。
発令中は、屋外での運動や長時間の外出を控えるよう呼びかけられるほか、工場の操業制限、そして自動車の走行規制が強化されます。学校の屋外活動が中止になることもあり、市民生活への影響は小さくありません。
日常的にある「オイ・ノ・シルクラ」の強化
メキシコ首都圏には、平常時から「Hoy No Circula(オイ・ノ・シルクラ=今日は走らない)」という自動車の走行規制があります。ナンバープレートの末尾の数字や色分けされた排ガス検査のステッカーによって、曜日ごとに運転できない車を決める制度です。東京でいえば、車のナンバーによって特定の曜日は都心に乗り入れられない、というイメージに近いものです。
環境緊急事態が発令されると、この規制の対象が普段より大きく広がり、通常なら走れるはずの車まで一時的に運転できなくなります。解除されれば規制は通常の運用に戻るため、現地メディアが「明日はどの車が走れるのか」を連日詳しく報じるのは、それだけ多くのドライバーの足に直結するからです。
なぜ繰り返すのか 地形と標高という宿命
メキシコ市が大気汚染に苦しむ最大の理由は、その立地にあります。標高およそ2,200メートルの高地にあり、四方を山に囲まれた盆地に、2,000万人規模の人口が集中しています。盆地であるため汚れた空気が滞留しやすく、標高が高いぶん酸素が薄く、エンジンの燃焼効率も下がりやすいとされています。さらに強い日差しが排ガス中の物質と反応し、光化学スモッグの原因となるオゾンが生成されやすい環境です。
1990年代には「世界で最も空気の汚れた都市」とまで言われ、そこから工場規制や燃料の改善、車両検査制度の導入などで状況は大きく改善してきました。それでも、風が弱く高気圧に覆われる時期には汚染物質が閉じ込められ、今回のような緊急措置が必要になります。
日本の読者にとっての意味
日本でも光化学スモッグ注意報が出ることがありますが、メキシコ首都圏のように交通規制まで連動して強化される仕組みは一般的ではありません。地形と都市の巨大さが重なったとき、大気の問題がどこまで日常の制度になりうるか。メキシコの事例は、その一つの到達点と言えるかもしれません。なお今回の解除がどの段階の措置に当たるのか、今後の再発令の見通しについては、現時点で断定できる情報が限られており、続報を待つ必要があります。
※本記事はメキシコの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:La Jornada




