
この記事のポイント
- ブラジル高等選挙裁判所が、聖母アパレシーダを扱ったタベット氏の投稿の公開を認めた。
- メンドンサ判事が審理の途中で票を変え、削除維持から公開容認へ結論が逆転した。
- 別の投稿は虚偽情報として削除が維持される見通しで、風刺と虚偽の線引きが問われている。
判事1人の票の変更で結論が逆転
ブラジルの高等選挙裁判所(TSE)は、コメディアンのアントニオ・タベット氏がSNSに載せた投稿について、公開を認める判断を下しました。この投稿は、ブラジルで広く信仰されている「聖母アパレシーダ」と政治家のフラビオ・ボルソナロ氏を結びつける内容です。現地の大手メディアG1やUOLによると、審理の途中でアンドレ・メンドンサ判事が票を変え、それによって結論が削除の維持から公開の容認に変わりました。
一方で、同じく聖母アパレシーダに関わる別の投稿については、TSEの多数が「虚偽情報(フェイクニュース)にあたる」として削除命令を維持する方向でまとまったとも報じられています。つまり、宗教と政治家を結びつける投稿がすべて一律に禁じられたわけではなく、投稿ごとに判断が分かれた形です。
聖母アパレシーダとは
聖母アパレシーダは、ブラジルの守護聖人とされる聖母マリア像です。18世紀にサンパウロ州の川で漁師が網で引き上げたという言い伝えがあり、毎年10月12日は国の祝日になっています。カトリック信者が多いブラジルでは国民的な信仰の象徴で、政治家が自分を宗教と結びつけて語ったり、相手陣営がそれを批判・風刺したりすると、大きな反発を招きやすい題材です。
登場人物と制度の背景
フラビオ・ボルソナロ氏は上院議員で、ジャイル・ボルソナロ元大統領の長男です。タベット氏は、宗教や政治を風刺するネタで知られるコメディ集団「ポルタ・ドス・フンドス」の創設メンバーの一人です。
TSEは選挙の運営と選挙関連の紛争を扱う専門の裁判所で、最高裁(STF)の判事も兼務で加わっています。メンドンサ判事はボルソナロ前政権のときに最高裁判事に指名された人物です。ブラジルでは前回の大統領選以降、選挙裁判所がSNS上の虚偽情報の削除を命じる権限を積極的に使ってきました。これを「民主主義を守るため」と評価する声がある一方、「表現の自由への過剰な介入だ」とする批判も根強くあります。
風刺と虚偽情報の線引き
今回の判断で問われたのは、風刺やユーモアとして表現の自由で守られる投稿と、有権者を誤解させる虚偽情報との境目です。報道からは、判事たちがどんな基準でタベット氏の投稿を前者と見たのか、詳しい理由までは分かりません。ただ、選挙が近づくにつれて同じような投稿をめぐる申し立ては増えるとみられ、今回の判断が今後の参考にされる可能性があります。宗教と政治、ユーモアと規制が交わるこの問題は、ブラジル社会の分断の深さも映していると言えそうです。
※本記事はブラジルの現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:G1




