
この記事のポイント
- テネシー州で女性死刑囚への薬物注射による執行が2度失敗し、当局が執行を中断する異例の事態となった。
- リー知事は州内のすべての死刑執行を一時停止すると表明し、執行体制への信頼が改めて問われている。
- 米国では薬物の調達難を背景に執行の失敗が相次いでおり、再執行の是非が今後の争点になる可能性がある。
2度の薬物注射でも執行に至らず
米国南部テネシー州で、女性死刑囚クリスタ・パイク氏に対する薬物注射による死刑執行が失敗し、州当局が執行を中断する異例の事態となった。NBCニュースやニューヨーク・タイムズなど複数の米メディアが報じた。報道によると、執行室では薬物が2度投与されたものの、パイク氏の死亡を確認するに至らず、当局は執行を見合わせた。立ち会った関係者の「めちゃくちゃだった」という言葉が、現地報道の見出しに使われている。
テネシー州知事、全執行を一時停止
この失敗を受け、テネシー州のビル・リー知事は州内で予定されていたすべての死刑執行を一時停止すると表明した。米国では死刑の存廃や執行方法は州ごとに決められており、テネシー州は薬物注射を主な執行方法としている。同州では2022年にも、薬物の検査手続きに不備が見つかったとして知事が執行を停止し、外部の調査が入った経緯がある。今回の失敗により、執行体制そのものへの信頼が再び問われることになりそうだ。
パイク死刑囚とは
パイク氏は1995年、同州ノックスビルで起きた女性殺害事件で有罪となり、死刑判決を受けた。事件当時18歳だったとされ、同州で唯一の女性死刑囚として長年収監されてきた。米メディアによれば、同州で女性に対する死刑が執行されれば約200年ぶりになるとみられており、執行前から全米で注目を集めていた。
米国で繰り返される「執行の失敗」
米国では近年、薬物注射による執行で静脈の確保に手間取ったり、薬物が十分に効かなかったりする事例が各州で報告されている。背景には、製薬会社が死刑用の薬物供給を拒む動きが広がり、各州が調達先や薬物の組み合わせの変更を迫られてきた事情がある。一部の州では窒素ガスや銃殺など別の方法を導入する動きもあり、執行方法をめぐる議論は続いている。今回のテネシー州の事例が、こうした議論にどう影響するかは今後の検証次第で、現時点で断定はできない。
今後の焦点
パイク氏の処遇や、再執行の是非については、今後、州当局や裁判所の判断が注目される。一度執行に失敗した死刑囚への再執行は、米国憲法が禁じる「残虐で異常な刑罰」にあたるかどうかが争点になる可能性があり、過去にも裁判で争われた例がある。死刑が存続する日本にとっても、執行の手続きや透明性をめぐる海外の議論は参考になる論点を含んでいる。
※本記事は米国の現地報道をもとに、編集部が日本語で再構成したものです。
📰 情報ソース:NBC News




